電子印による印鑑とは?無料で作成する際のメリットとデメリットを紹介
公開日: 2024/10/24|最終更新日: 2024/10/24
電子印による印鑑は、デジタル時代に即した新しい認証方法として注目を集めています。電子印鑑の使用を検討している方の中には、従来の印鑑との違いについて詳しく知りたいという方もいるのではないでしょうか。
電子印鑑は通常の印鑑とは異なる部分があるため、前もって使用方法について把握しておくことが大切です。
そこでこの記事では、電子印による印鑑の概要についてご紹介します。また、電子印鑑のメリットとデメリットや法的効力についても解説していますので、参考にしてください。
<目次>
- 電子印とはどのような印鑑のこと?
- 電子印による印鑑のメリットとデメリット
- 電子印による印鑑の作成方法
- 電子印による印鑑の法的効力
- まとめ
電子印とはどのような印鑑のこと?
日本では、印鑑が文書や契約書の真正性を証明する役割を果たしています。以前は紙に押印するという方法で行っていましたが、現在では電子文書に押印する電子印鑑が徐々に普及するようになりました。
ここでは、電子印による印鑑の基本情報についてご紹介します。また、電子署名との違いや電子印鑑の主な種類についても詳しくまとめました。
電子印鑑の定義
電子印鑑は、デジタル時代に対応した新しい認証方法です。従来の物理的な印鑑に代わり、電子文書に押印できる印影データのことを指します。
電子印鑑の魅力は、電子機器を用意すれば、誰でも簡単に利用できることです。印鑑の場合には使用時に携帯しておく必要がありますが、電子印鑑の場合にはスマートフォンやパソコンを利用して押印できます。
押印のために書類を送付する必要がないため、時間や手間の大幅な軽減につながるでしょう。
電子印鑑と電子署名の違い
電子署名と電子印鑑は、どちらもデジタル文書の認証に使用されますが、性質と機能に違いがあります。
電子署名は、電子文書の作成者を示すとともに、文書の改ざんを防ぐ技術的措置です。高度な暗号技術を用いて、文書の完全性と作成者の身元を保証します。一方、電子印鑑は、デジタル化された印影データを電子文書に付与するものです。
高いセキュリティが求められる場面では、電子署名を使用すると良いでしょう。一方で、電子印鑑は、比較的重要度の低い文書での使用に適しています。
電子印鑑の種類
電子印鑑のタイプは大きく分けると2種類です。印影を画像化したタイプの場合、紙に押した印鑑をスキャンしたり、ソフトウェアで作成したりした単純な画像データを使用します。
一般的な無料の電子印鑑を使用する場合、印影を画像化したタイプである可能性が高いでしょう。認印程度の扱いになっており、重要書類での使用には適さない場合もあります。
印影に識別情報が保存されたタイプの電子印鑑もあります。印影データに捺印者や日時などの識別情報が組み込まれています。本人による捺印の証明が可能なため、契約書や雇用関連の重要書類での使用が可能です。
日常的な認印用途なら画像化タイプでも問題ありませんが、重要書類には識別情報付きのタイプの使用をおすすめします。
電子印による印鑑のメリットとデメリット
電子印鑑の導入を検討する際には、あらかじめメリットとデメリットを把握しておきましょう。事前に理解しておくことで、導入時の混乱を避けられます。
個人事業主や企業として使用する場合、電子印鑑の導入が適しているのかを正しく判断できるでしょう。ここでは、電子印による印鑑のメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
電子印の印鑑のメリット
電子印鑑のメリットのひとつは、押印に関する業務が大幅に効率化されることです。印章の保管や貸し出し手続きが不要になるため、時間と労力が節約できます。また、従来の印鑑には紛失のリスクがありますが、電子印鑑ならリスクを軽減できるでしょう。
電子印鑑の別のメリットは、取引手順の簡略化です。従来の印鑑を使用するときよりも、スピーディーに業務を進行させられます。責任者の不在による遅延や郵送に伴う業務の停滞などの問題も解消できるでしょう。
電子印鑑を使用すると、コスト削減が可能です。印刷費、郵送費、印紙税などが不要になるため、経費を大幅に削減できます。最後のメリットは、容易な業務管理です。デジタルデータとして保存されるため、検索や閲覧にかかる時間を短縮できます。
電子印の印鑑のデメリット
電子印の印鑑の場合、取引先によっては受け入れられない可能性があるでしょう。電子印鑑はまだ十分に浸透しておらず、法的な効力の面で懸念があるため、従来の印鑑での対応を求められることがあります。
別のデメリットはセキュリティにおけるリスクです。単純な画像データの電子印鑑は偽造のリスクが高く、なりすましや不正使用の危険性があります。サイバー攻撃による情報漏えいのリスクにも注意が必要です。
また、高機能な電子印鑑の導入には、初期費用やランニングコストがかかります。セキュリティを確保するためには、有料サービスの利用がおすすめです。
電子印鑑の普及率はまだ低く、特に地方や行政機関では対応が遅れている場合があります。取引先の体制や意向に合わせる必要があり、柔軟な対応が求められるでしょう。
電子印による印鑑の作成方法
電子印鑑の導入を決めたものの、作成方法や使用方法で悩んでいる方も多いでしょう。作成や使用の仕方を把握しておくと、書類の無効化や情報漏えいなどトラブルのリスクを軽減できます。
また、事前に理解しておくことで、電子印鑑と従来の印鑑の適切な使い分けが可能です。ここでは、電子印鑑の作成方法から具体的な使い方、使用時の注意点について詳しく解説します。
電子印鑑の作成方法
電子印鑑の作成方法には主に3つです。最も手軽な方法として、WordやExcelなどのOfficeツールを使用する無料の方法があります。文字を入力し図形で囲むだけで簡単に作成できますが、オリジナリティや証明力は低くなるでしょう。
また、実物の印鑑をスキャンして電子化する方法もあります。Officeツールと同じように無料で作成が可能です。本物の印影に近い仕上がりを期待できますが、一方でセキュリティのリスクは高いでしょう。
最後の方法は、有料の電子印サービスです。セキュリティ対策が充実しており、押印履歴などの管理機能も備えています。
複製不可能な電子印鑑を作成できるため、正式な書類にも使用可能です。電子印鑑の作成方法を選択する際は、使用目的やセキュリティ要件を考慮すると良いでしょう。
電子印鑑の使い方
電子印鑑の使用方法は、使用するソフトウェアによって若干異なりますが、基本的な手順は共通しています。
ExcelやWordの場合、「挿入」リボンから「画像」を選択し、保存した電子印鑑の画像ファイルを挿入しましょう。Wordの場合は、「レイアウトオプション」から「前面」を選択すると、文字に重ねて配置できます。
PDFへ押印する場合、Adobe Acrobat Readerのスタンプ機能の活用が便利です。「ツール」にあるカテゴリーから「スタンプ」を選び、その後「電子印鑑」のデザインを選択します。右クリックで「ユーザー情報を編集」を選択すると、印影内容の入力が可能です。
電子印鑑の背景透過の方法
電子印鑑の背景透過は、見栄えと実用性の両面で重要です。背景が透過されていないと、印影の後ろにあるべき社名や住所が隠れてしまう問題が生じます。
背景透過の方法は、大きく分けると2つです。Excelを使用する場合、画像を挿入した後に「図の形式」から「背景の削除」を選択します。必要に応じて透過範囲を調整し、PNG形式で保存すれば完了です。
別の方法としてWebサービスの活用があります。画像をアップロードするだけで、自動的に背景を透過できるので便利です。実物の印鑑をスキャンした画像でも、対応可能なケースもあります。
電子印鑑を使用する際の注意点
電子印鑑を使用する際には、なりすましへの注意が必要です。無料で作成できる画像タイプの電子印鑑は比較的容易に複製や改ざんができるため、重要な書類や機密情報を扱う場面では避けたほうが良いでしょう。
土地や賃貸契約など、法的に実印が要求される場面では電子印鑑は使用できません。電子印鑑は印鑑登録ができないため、実印の代替として利用するには難しいでしょう。
電子印による印鑑の法的効力
電子印鑑の普及に伴い、法的効力や従来の印鑑との違いについて疑問を持つ方も多いでしょう。契約書、請求書、社印として使用する場合、電子印鑑の法的有効性を確かめておくのが重要です。ここでは、電子印鑑の法的効力について詳しく解説します。
電子印鑑の法的効力
電子印鑑の法的効力は、印鑑のタイプによって異なるでしょう。単なる印影のみの電子印鑑、例えば実物の印鑑をスキャンしたものや無料サービスで作成したものは、複製が容易であるため、「本人性の証明」としての効力は限定的です。
一方、電子証明書が付与された電子署名を伴う電子印鑑は、高い法的効力を持ちます。2001年には「電子署名法」が施行されており、電子印鑑でも「真正に成立したもの」と推定されるようになりました。訴訟の際も、有力な証拠として使用可能です。
従来の印鑑との法的効力の違い
従来の印鑑と電子印鑑は、法的効力において類似点があります。従来の印鑑は、民事訴訟法第228条第4項に基づき、押印された文書は本人が作成したものと推定される法的効力を持ちます。これは、長年にわたり日本の契約文化の基盤となってきました。
一方で電子印鑑についても、適切な電子証明書付きの電子印鑑も同等の法的効力を持ちます。ただし、電子印鑑が単なる印影データではないことが重要です。国の認定を受けた認証事業者が発行する電子証明書によって本人性が証明された場合には有効性が認められます。
まとめ
電子印鑑は、デジタル時代に対応した便利な認証ツールです。従来の印鑑と比べて業務効率化やコスト削減などのメリットがありますが、セキュリティリスクや普及率の低さといったデメリットも存在します。
作成方法は無料のOfficeツールから有料サービスまでありますが、用途に合わせて選ぶのが良いでしょう。
法的効力は電子証明書の有無で大きく異なり、重要書類には適切な電子署名が必要です。取引や契約でのトラブルを最小限に抑えるには、電子印鑑と従来の印鑑との使い分けが重要です。